~弱くなってそして強くなったペチュニア~
ペチュニアは雨に弱いという印象を持っている人が園芸家の中に、かなりの割合でいらっしゃるのではないかと思います。私も中学生の時にペチュニアを育てたことがあって、その時の受けた印象も梅雨になると腐ってしまう植物というものでした。
ペチュニアの品種改良は今から190年ほど前、南米ウルグアイから伝わった2種の野生種が元になりイギリスで始まりました。ウルグアイの中でも改良の元になった野生種のペチュニアが、育っていた地域は夏に多湿になる場所でしたのでこの野生種は雨にさらされていても元気に育つものでした。
改良の進んだ現代の品種が雨に弱く、祖先は雨に強い。これだけを聞くと品種改良した挙句にどうしてそうなったの?品種改良って性質を良くするものなんじゃないのと思われるかもしれません。これは品種改良が進んだ地域に原因があるのです。
ペチュニアの品種改良が進んだのはアメリカ西海岸のカリフォルニアで、この地域は年間を通して乾燥した冷涼な気候で、しかも日差しが燦燦と降り注ぎ続けるペチュニアにとっては理想郷のような地域です。
そんな素晴らしい土地でペチュニアは多種多様な色と大きさに花開き、園芸植物としての地位を不動にしていきました。ですが、ここに落とし穴がありました。それは生育に適した気候で改良されたため、気づけば祖先だったら問題なく育つような悪環境に耐えられなくなっています。
日本の梅雨のような多湿な環境では枯らしやすい訳です。
こんなペチュニアの品種改良の歴史に転機が訪れたのは1986年の事でした。それまで150年程の長きにわたり2種の野生種だけを使って多様な品種を生み出し続けてきた訳ですが、結果的に性質が弱くなってしまうことになりました。そこに新たな野生種がブラジルから日本にやってきたのです。
そして誕生したのがサフィニアと呼ばれる雨に強く旺盛に育つ画期的な品種群でした。
このサフィニアは大阪花博の会場で人気となりその後の園芸ブームを代表する花になっていきました。サフィニアに使われた野生種は現在の丈夫になったペチュニアの多くの強さの根源になっています。