プリムラ

プリムラは休めない

プリムラは休めない

プリムラといえば秋のうちからパンジーやガーデンシクラメンと園芸店に並んでいる姿に馴染みのある人も多いかと思います。ですので、プリムラは秋から冬の花だと思われているのではないでしょうか?


ここで考えてほしいのですが、植物が花を咲かせる目的は一つ、種を結んで子孫を残すことです。ですが、秋早いうちはまだしも、冬に花に飛んでくる虫はほとんどいません。特にプリムラの多くは自分の花粉がめしべに付いても発芽せず、受精できない性質を持っていますので、他の株から花粉を虫などに運んできてもらう必要があります。


それなのにあえて花粉を運ぶのに不向きな季節に花を咲かせる理由…。


それは…人間に無理やり季節外れに咲かせられているのです。プリムラは本来秋になると成長を止め、寒い冬を地面に張り付くようにして越え、早春の雪解けとともに他の花に先駆けて花を咲かせ、春の訪れとともに活動を始める虫達に花粉を運んでもらう性質のものです。


プリムラという名前にもその性質が表されていて、primus=最初のというラテン語からPrimula(プリムラ)という名前がついたとも言われています。ところが人間の業というべきか、より早く花を見たいという欲がこの性質を変えてしまいました。


たくさんのプリムラを育てていると、その中に他の株よりも早く花を咲かせる株が出てきます。その株から種子を採り、そこから咲かせた株の中でまた早く咲くものを選んで種子を採るといった事を繰り返していくと、最終的には秋が深まっても成長を続け、そのまま花を咲かせてしまう性質に変わってしまうのです。

プリムラが持っていた本来の性質を変えてしまった事は、早く花が見られて良かったというメリットばかりではありません。プリムラは秋の深まりとともに成長を止めて寒い冬を乗り越える準備をしますので野生のものはアルプスの山の上でも平気です。しかし休むことを知らない改良品種は寒さに耐える術を持ちませんので凍結する寒さが来ると傷んでしまいます。


本来プリムラが花を咲かせるのは寒さが緩む早春からですので、これは無理もない話で、冬に傷むプリムラの様子を体験した園芸家が「プリムラは寒さに弱い」などと言うのはなんだかお門違いの様に思ってしまいます。