
“ 選ぶ ” ということ ― 花も、私たちも
ある種苗会社を訪問した際のこと。
近年は「珍しさ」よりも「暑さに強い品種」を選ぶ生産者が増えている―――そんな話を聞いた。
特に原種に近い品種を選ぶ傾向があるのだとか。
品種改良、いわゆる「育種」の過程では、さまざまな花が交配され、見た目の美しさや希少性だけでなく営利的に栽培がしやすいかどうかといった観点も加味されながら新しい品種がつくられていく。もちろん、10年先のマーケットを見据えながらの試行錯誤もつづく。
しかし近年の酷暑は、人間だけでなく植物にとっても過酷さを極めるもの。夏場に生長が停滞すれば、その影響は秋以降の出荷に及ぶのだから、生産者にとってはまさに死活問題。
近年の野菜の高騰も、根は同じだ。
これからの時代は特に、生産者にとって「どんな花が売れるか」だけでなく、「どんな花を植え付けるか」という品種選定が重要になる。できるだけ地域の環境にあったものを選ぶことが、持続的な生産・販売へとつながる。
こうした話は、私たちの日常にも重ね合わせることができる。ときに自分の本心とは裏腹に、外部からの影響で、本当に優先すべきことが、見えなくなることはないだろうか?
どんなときにも平常心で、自分にとって何が大切かをしっかり見極めながら―――
無理のない流れのなかで、自然と進むべき道を歩んでいきたいものだ。
そう、川の流れのように。
