
育種家
私の知り合いに、「育種家」がいる。
聞きなれない職業だが、業界の未来を託された貴重な存在でもある。生産者たちは、栽培をはじめるにあたって苗・種子・球根を購入する必要がある。この苗などを開発し、種苗会社などを通じて生産者へ卸す役割を担うのが育種家である。
四季がある日本では一年に一度、耐夏性・耐寒性・長短・色・耐病性などなどたくさんの要素をかけあわせるように、おしべとめしべを受粉させる。そして採取した種をまき、再び優勢な系統を選抜していくのだ。
一般的に、育種開始から流通にのせて小売店で販売されるまでに、約10年という歳月が必要だといわれている。1年でもトレンドが移り変わるなかで、10年かけて市場が求める品種を開発するとは。
育種家は、植物が持ち合わせる品種特性と、マーケットのニーズを微細に紐解きながら、新しい種の開発に日々、勤しんでいる。深い見識・観察眼が必要になる職業だが、10年を言葉で語りきることはできない。経済的な観点からも並大抵の努力では成立しない。
彼らを支えることは、業界の未来にも大きな影響を及ぼす。
まずは、いま目の前にしている花を手にとり、育種家たちの思いに心を寄せて欲しい。
