八重咲リンドウ “蒼孔雀” 誕生物語 その2
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新品種が誕生してそれが世に出るまでには数々のハードルがあります。趣味で作って趣味で楽しむのであればそれは比較的簡単かもしれませんが、商業流通に乗せるにはこのハードルが中々乗り越えられない高い壁になります。
蒼孔雀 は、この壁を乗り越えてデビューするのに実に12年を要しました。生まれて間もない蒼孔雀がまず試作という名の一つの大きなハードルに向かった先はドイツ。日本生まれの蒼孔雀なのにまず向かったのが外国だったのは、その少し前のヨーロッパでは日本のリンドウの美しさがブームになっていて、次にデビューする新品種が日本以上に望まれていたからでした。ですがその先に待っていたのは厳しい現実で、数か月先に届いた連絡によると、「試作失敗」との事でした。
試作を始めるにはまず、細菌、カビ、ウイルス等に汚染されていないクリーンな苗を作る必要があるのですが、その作業をやっているうちに株が枯れたとの内容でした。これで一年が終わり、もう失敗できない翌年は自宅に手作りした研究室で試験管の中にほぼクリーンな苗を作って送り、それを現地の研究室で更に精度の良いクリーニングをしてもらってやっと試作スタート。難産でのスタートで、そこから3年も試作してもらった末に、結局は魅力的な品種だけれどもどうしても商業生産は無理だということになりました。
ほぼ同時にアメリカでも試作してもらったのですが、これもだめでした。試作場所が水が貴重なカリフォルニアでしたので、水をたくさん使いすぎたのが原因の一つだったようです。誰より蒼孔雀に魅せられていて諦めきれない私は試作終了で廃棄される運命の苗を引き取るべくドイツに向かい、試験管に入った苗を日本に持ち帰り、次に試作に出したのは岩手。ここでも試作は難航し3年以上かかってしまいましたが、岩手の人達の熱意が功を奏して安定生産が可能になりようやく世に出ることとなったのでした。