島国モーリシャス。アンスリュームの産地に訪れ感じたこと
ギラギラした太陽の陽射し。小型旅客機のタラップを一人でゆっくり降りた眼下に広がるのは、島国モーリシャス。インド洋の貴婦人とも称されるその地を訪れたのは今から18年ぐらい前になるだろうか!?思い出の一コマは、今も心の中で色褪せていない。今回はそんな思い出を巡る話をしよう。
ほぼ丸一日をかけてたどり着く絶景の島
モーリシャスは南アフリカの右隣に位置するマダガスカル島の東側にある小さな、小さな島国。「世界の絶景」を取り上げるメディアで、しばしば目にする自然豊かな場所だ。
関西国際空港を出発してからドバイ経由で、片道約22時間(ちなみに帰りは38時間)の旅。フライト時間はもちろん、機内に日本人観光客がごくわずかだったことが、日本からどれだけ遠い国なのかを物語っていた。
この地を訪問したのは、切り花用アンスリュームの取引先にご挨拶するためだ。花業界でも台湾産が主流の中、わざわざモーリシャスからアンスリュームを輸入する商社は圧倒的に少ない。理由に確証はないが、台湾産の方が近隣国ということもあり情報を得やすい上に、輸送コストが抑えられるなど取引しやすい側面があるのだと思う。
その一方で台湾産のアンスリュームは大ぶりなものが多い。生け花やアレンジメントなどで使用しやすい適度な大きさを求めていた私にとって、モーリシャス産は非常に都合がよかった。ちなみに幻のコーヒー種が発見されたのがモーリシャスに隣接していることから、その栽培条件のよさはお墨付きである。
地の利を生かした栽培風景
フランス語・英語・クレオール語の3か国語を巧みに使い分ける現地の社長に案内されながら訪問したアンスリューム畑。そこで様々な種類・大きさ・色を目にすることができた。
さすが亜熱帯地域だ。簡単な雨よけ用の寒冷紗があるのみ・・・。「地の利を生かす」ことで手間を掛けずに栽培している。ハウスや暖房設備など過度なコストが掛かるやり方は、持続性に欠ける。そのような意味において、とてもサスティナブルな栽培といえるだろう。
畑へ向かう途中で見た珍しい塩田での作業風景や首都ポートルイスでの食事は、いまだ記憶に新しい。そういえば、帰りに立ち寄ったドバイでは、すでに日焼けした顔の皮は綺麗に生まれ変わっていた。どおりで、機内で頬や額の突っ張りが気になったわけだ、と当時回顧したことを思い出す。
固有種の絶滅から考えさせられること
ところでモーリシャスにはその昔、ドードーという飛べない鳥類がいた。その固有種は、大航海時代に忽然と姿を消した。絶滅したのだ。
それまで隔離された天敵がいない環境で進化の過程を経たドードーは、入植者による食用としての捕獲や外部の家畜からの大きな脅威にさらされた。
私が訪問した18年前から現在もまだ日本人にとって馴染みがないモーリシャスだが、ヨーロッパの方にとっては、高級リゾート地としての地位を確立している。前述したように、世界の絶景として自然の見どころがいっぱいだ。
静かに時を刻んでいた島も、人々の往来により、忙しなくその表情を変えていると感じざるをえない。
失って気づいたのでは、遅いことがある。
それは、どこの国も同じなのかもしれない。