鳥毛清喜のガラス花器

鳥毛 清喜

鳥毛清喜さんは1941年京都生まれ。イタリアでガラス制作を学んだ後、東京にアトリエを構えると、ホテルやビルの装飾を手掛けると同時に数々の個展も開催。1983年、ガラス工芸品の国際大会「フラジールアート・コンペティション」では日本人初のグランプリを受賞するなど輝かしいキャリアを積んだ後、ガラス史と呼べるものがなかった東南アジアのバリ島に「自分が歴史をつくる」という思いで1995年から拠点を移動。80歳となる現在も精力的に活動を続けるガラス工芸作家です。バリ島はもちろん世界各国の有名ホテルやレストランの装飾品を数多く手掛け、世界的に高く評価されています。

鳥毛さんの作品には、同じ原料から作られたとは思えない無数のテクスチャーが存在し、ガラスであることを忘れてしまう温かさがあります。そのテクスチャーを生み出す製法は20種類以上存在すると言うから驚きます。

鳥毛清喜のガラス花器
鳥毛清喜のオブジェ

ザ・アプルヴァ・ケンピンスキー・バリのオブジェは金剛砂でガラスを傷つけるサンドブラスト加工を行い、乳白色に近い色味を出した後に裏面を削って模様を彫って作られています。光を纏い柔らかく、優しい印象の作品とは対照的に、その制作には想像を絶する手間がかけられています。

鳥毛清喜のオブジェ

バリのロイヤルピタマハで開催された展覧会に出品した作品のひとつ、リボンを編み上げたような模様が印象的なオブジェ。ガラス板の上に帯状のガラス素材が縦横等間隔に並べて作られ、一定の太さのガラス帯が等間隔で配置され匠の技と遊び心が詰まった一品です。

鳥毛清喜のガラステーブル

インドネシアにあるブランズBSDのロビーにあるテーブルは「積層ガラス」という技法で、熱を使用せず、板状のガラスを何枚も張り合わせて作られています。光まで閉じ込めたようなその輝きは華やかで神々しく、バリの高級ホテルやレストランにも同じ技法でつくられた鳥毛さんの作品が多く採用されています。

鳥毛清喜のグラスハウス

石のような氷のような不思議な質感の外壁が特徴的なグラスハウス。原料として使用するガラスの塊の大きさなどにバリエーションをつけることによって、ユニークな表情と深みが生まれます。反射する光ではなく、陰影や抱く光を楽しめる作品です。

鳥毛清喜の花器デッサン1
鳥毛清喜の花器デッサン2
鳥毛清喜の花器デッサン3
鳥毛清喜の花器デッサン4

花を綺麗に見せつつガラスの可能性を表現する
オリジナル花器の制作が実現

ガラスの可能性を豊かに表現する鳥毛さんの作品の数々に惚れ込んだ弊社社長より熱烈なオファーを送ったところ、オリジナル花器の制作企画が実現しました。

「一社からこんなに多くの注文を受けるのは初めてなので、不安感や緊張感はありますが、期待は裏切りたくない」と鳥毛さんに快諾いただきました。弊社からの要望としてはサイズ感のみ。鳥毛さんは飾ったお花が生き生きと綺麗に見えることを最優先に、ガラスの透明感と光の陰影を意識したデザインに仕上げてくださいました。「ガラスは光の印影を敏感に反応する、一番の素材と考えています。あとに続くのが、清らかな河の水と透明度の高い海でしょうか…」とのこと。日差しが差し込む様々な生活シーンで、計算された光の変化を楽しんでいただけます。

ガラスの製造工程

「ガラスはFragile Art(フラジールアート)と呼ばれ、こわれものの芸術というのでしょうか。メソポタミアでガラスが生まれてから、この運命はなにも変わっていない」とおっしゃる鳥毛さん。儚い素材だからこそ、1点1点丁寧に命を吹き込んだ花器はどれも、美しさや温もりが際立っています。

その製造工程はリサイクルガラスを溶かすところからスタートします。
ガラスが完全に溶ける温度は1400度。工房には赤々と燃える熱気が渦巻いています。

鳥毛清喜のガラス花器
ガラス材を溶解炉に投入

ガラス材を溶解炉に投入

溶かしたガラスは拭き竿と呼ばれる金属管に巻き取り、形を整えていきます。一度に必要料のガラスを巻き取らず、何度かに分けて元玉を作り大きさを調整します。

元玉作り

元玉作り

次に吹き竿の反対側から息を吹き込んで、ガラスを膨らませます。少し膨らませたら、溶解炉でガラスに熱を加えて取り出し、息を吹き込むという作業を繰り返し行います。

吹き込み

吹き込み

程よい大きさになれば、次に開口部(花器口)を作ります。まずは、小さな穴を開けて、徐々に広げていきます。余分なガラスはハサミで取り除き、切り口を整えます。

余分なガラスをカット

余分なガラスをカット

最後に吹き竿から花器を切り離し、底部を仕上げた後に500℃の除冷炉で、1日かけてゆっくりと冷まします。ガラスの寿命は除冷で決まると言われる程で、この工程をおろそかにすると、ガラスの中に歪みが生じ、割れやすい花器になってしまいます。

徐冷炉で冷却

徐冷炉で冷却

こうして完成した花器はどれも重量感があり、ガラスの中にたっぷりと光が留まります。「ワイングラスのように薄いほどワインが美味しく見えるガラスと、シャンデリアのようにキラキラするガラス。あのキラキラはガラスの中に光が溜まるからなのですが、僕のガラスもそのキラキラの光、透明な混乱を求めています」。

日本総合園芸オリジナル
鳥毛清喜のガラス花器

今回、販売する花器4種はどれも日本総合園芸オリジナルの限定商品になります。場所と時間、使い方の違いにより、様々な表情を楽しめるので、花器としてはもちろん、空間を彩るオブジェとしてもご利用いただけます。リサイクルガラスの爽やかなブルーグリーン、重みのある質感、手作りの温かさ、アンティーク調のぽってりとしたシルエットと光の変化を、この機会に是非お楽しみください。